SIGGRAPH/SIGGRAPH Asiaデモンストレーション展示の舞台裏 #mastAdC
*この記事は,mast Advent Calendar 2017 の15日目の記事です。
今回の記事では,弊ラボの分野におけるトップカンファレンスのひとつであるSIGGRAPHで,デモンストレーション展示(デモ)をしてきた話を書きました。SIGGRAPHはいくつか参加した学会の中でも最も規模が大きい学会です。デモセッションの規模もかなり大きく,1日8時間の展示を数日間行うのが通例です。
はじめに #誰
@1heisuzuki です。愛知県豊橋市の普通科高校出身で,一般前期入試で筑波大学情報メディア創成学類に入学しました(mast15)。執筆現在,同学群の3年生です。1年次から先導的研究者体験プログラム(ARE)に参加し,デジタルネイチャー研究室で研究をしていて,卒業研究も同研究室に配属になりました。
その他やっていることは下記サイトにまとめています。
https://1heisuzuki.github.io
目次
そもそもSIGGRAPHって何
ざっくりとわかるSIGGRAPH
- Special Interest Group on Computer GRAPHics の略
- コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の分科会(SIG)およびそれが開催する国際学会
- SIGGRAPH(無印)とSIGGRAPH Asia(アジア)がある
- 今年で無印は44回目,アジアは10回目
- Technical Paper (〜10ページ程度の英語論文)の採択率は20%くらい
- ここ数年の参加者数は無印が15000人くらい,アジアは6000人くらい
SIGGRAPHはコンピュータグラフィックスやインタラクティブ技術の分野で知名度が高く,権威のある学会です。いわゆるトップカンファレンスのうちのひとつです。
SIGGRAPHにおける展示セッション
SIGGRAPHでは,研究の著者ら/企業が展示できるセッションがいくつかあります。ちなみに,無印とアジアで名前が違ったり,他方にしか無かったりします。雑に説明するとこんな感じ。
- Emerging Technologies (E-tech,イーテック): 最新技術の展示
- Studio : ワークショップ型の展示
- VR Village/VR Showcase : VR関係の展示
- Art Gallery : テクノロジーを使いつつアートに寄った展示
- Exhibition : 主に企業が展示・PRをする
筆者のSIGGRAPHでの展示経験は,Webページにまとめてあります。
デモの流れ
*論文のページ数や日程感は年によって変わることがあります。実際に投稿するときは学会公式の要項を精読してください。
論文・デモのプランを投稿:5〜6ヶ月前
SIGGRAPHのデモは査読(分野の専門家による審査)で採択,つまりデモが出来るかどうかが決まります。発表したい研究を2ページの英語論文にまとめます。また,ここでどのようなレイアウトで展示をするのか,どのような展示をするのかを記した展示プランも提出し,研究の新規性とともに会場で展示が可能かどうかについても審査が行われます。
ちなみに,論文の提出はmanabaのようなWeb上の投稿システムを通して行います。大抵,〆切が22:00 GMTだったり23:59 GMTだったりするので,日本時間だと早朝になります。ギリギリすぎるのは良くないですが,ギリギリまで修正したいタイプの人間にとっては時間帯がかなり辛いです。
採択通知:3〜4ヶ月前
採択か否かの通知がメールと投稿システムで行われます。ここでめでたく採択されると,論文の最終版に加えて,さらに詳細な展示プランをフォームから投稿します。例えば,電源はどれくらい必要か,ライティングは,音や光を発するか,広さは,Student Volunteer(後述)は何人必要か,機材保険,配送についてなどなど… これらの情報をもとに会場のフロアプランが構成されます。
また,学会は入場するのにチケットを購入する必要があるのでこのタイミングで購入してしまいます。SIGGRAPHの場合学生チケット&早期割引でも4-5万円になることがあります。デモ採択の場合は割引コードが発行されることが多いので,サイトの情報を精読して利用しましょう。
宿泊先や飛行機の予約もこれくらいのタイミングで行います。早いほど安くて良い条件で予約出来ることが多いです。特にデモの場合は会場に近い宿を選んだほうが幸せになれます!
ちなみに,筑波大学には学会発表の支援プログラムが全学的に行われているので,いつも活用させていただいております…!こちらも早い段階での申請が必要ですが,採択されればアメリカだと上限15万円で渡航費・宿泊費の支援をしていただけます。航空券とホテルのセットが安いサイトで予約すれば,この範囲に大抵収まります。詳しくは下記リンク先よりどうぞ。
配送系の準備:2〜3ヶ月前
論文の最終版や詳細な展示計画を提出したら,必要に応じて配送の準備をします。関税対策のためのカルネATAというものを発行したり,配送業者へ依頼相談を行ったりします。
ちなみに,筆者は前回SIGGRAPH Asia 2017で配送をしようとしていたのですが,手続きが間に合わず断念しました。配送に関しては,採択されたら即座に動き出したほうが良いです。大学の場合は,学内の手続きに時間がかかってしまう場合も多いので,大学の輸出管理担当のかたへ速攻で相談をしましょう。
展示物品の準備:採択通知後から出発まで
— メディアアルケミスト・ライトシーカー (@exilias) 2017年11月24日
フロアプランに応じて展示で持っていく物品の準備を進めます。適宜,展示セッションのチェアー(セッションをとりまとめる運営のかた)からメールで連絡が来てプランの修正をする場合もあります。また,特別なリクエストや懸念事項がある場合もチェアーに早い段階で質問したほうが良いです。
持っていくものの例としてはこんな感じです:
- デモの機材(これ無いとどうにもならない)
- 電源タップ
- 変圧器(気をつけないと電子部品等が火を吹きます)
- 研究プロジェクトのフライヤー
- ポスター
- 名刺
- 印刷した論文(説明に便利)
- FAQ集(説明に便利)
- Student Volunteerへのインストラクション(SVへの説明に便利)
- のど飴(展示で話しまくると喉がやられるので)
学会発表準備が終わらない2017
— 鈴木一平 / Ippei Suzuki (@1heisuzuki) 2017年11月24日
— メディアアルケミスト・ライトシーカー (@exilias) 2017年11月24日
出国:設営1〜2日前
もはや引越し (@ 成田空港 第1ターミナル in 成田市, 千葉県) https://t.co/FyKrArFJ6Q pic.twitter.com/C9aMSPkQYc
— メディアアルケミスト・ライトシーカー (@exilias) 2017年11月24日
空港までの移動はバスがオススメです。
土浦・つくば~成田空港線|高速バスご利用案内|バス情報|関東鉄道
つくば~羽田空港線|高速バスご利用案内|バス情報|関東鉄道
あまりにも荷物が多い場合には空港までの配送サービスや,大型タクシーを使うのも手です!
空港宅急便 | ヤマト運輸
大型のものや特殊なもの(磁石とかニッケル水素バッテリーとか)を預け荷物にするときは,事前に航空会社に積載可否を問い合わせた上で,早めにチェックインすることをオススメします。
開催国にもよりますが,空港からの移動では大型のタクシーを使っています。下記はタイで行われたSIGGRAPH Asia 2017の配送の様子ですが,ハイエースをネット予約しておいて利用しました。 #タイでも頼れるのはハイエース
現場 #タイでも頼れるのはハイエース pic.twitter.com/bXsWnOlEd4
— メディアアルケミスト・ライトシーカー (@exilias) 2017年11月25日
設営会場へ移動:設営初日
大抵の場合は設営日の前日に現地入りするので,展示物品も含めて一度宿泊先へ運びます。設営初日にヨイショと会場へ物品を移動します。
— メディアアルケミスト・ライトシーカー (@exilias) 2017年11月27日
設営:展示1〜2日前
いざ搬入が終わったらどんどん設営します。大抵足りないものが出てきて近くのホームセンターに走ったりします…!物品は予備を大量に持っていくことをオススメします。インチネジ・ミリネジの違いのように海外では文化が違って手に入らない場合もあるからです。
最も注意すべきなのが,展示会場の電源電圧です。日本のコンセントは100Vですが,海外だと220Vのような高圧電源の場合もあります。パソコンやタブレットなどの家電系は100-240V対応のものが多いですが, 安定化電源装置や特殊な充電器などは100Vのみ対応になっていて,高圧電源に接続すると発火したり故障したりする場合があるので注意が必要です。雷サージ付きの電源タップもその機能が働いて通電しない場合があるので注意。
また現地のコンセントプラグ形状も日本と異なる場合があるので注意が必要です。そして現地で「現地プラグ→日本プラグ」の変換アダプタを手に入れるのは難しい場合が多いです。
あと,海外の展示でしんどいのが時差ボケです。海外の慣れない空気感による疲れがあったり,他の〆切が学会日程と重なったりするので,体力をつけるか学会前は休養をたくさんとりましょう。
SIGGRAPH2017 pic.twitter.com/x7tdNaa2uO
— 鈴木一平 (@1heisuzuki) July 29, 2017
苛酷なことで知られる SIGGRAPH の風景シリーズ pic.twitter.com/d6lzZHKmhv
— 353 (@mtfrctl) August 2, 2017
#siggraphasiameltdown pic.twitter.com/lSnV49HaO8
— 鈴木一平 (@1heisuzuki) December 7, 2016
だんだん出来てきた。 #SIGGRAPH2016j pic.twitter.com/jzup8DvG9D
— 稲見昌彦 Masahiko Inami (@drinami) 2016年7月23日
展示開始!
Please visit our Emerging Technologies booth: et_0002.
— 鈴木一平 / Ippei Suzuki (@1heisuzuki) 2017年11月28日
Unphotogenic Lighthttps://t.co/IPGG0AcZpX pic.twitter.com/CT9M1EV4Ri
Please visit our demo booth!! #SIGGRAPH2016 https://t.co/GDDBkVl7hI https://t.co/gmtoUkTMLq pic.twitter.com/SwmhLhZA7t
— 鈴木一平 / Ippei Suzuki (@1heisuzuki) 2016年7月24日
今日も展示してます!!#SIGGRAPHasia pic.twitter.com/a9uV0q4nh5
— 鈴木一平 / Ippei Suzuki (@1heisuzuki) 2016年12月7日
展示がはじまるとどんどんお客さんがブースを訪れます…!口頭発表のセッションとセッションの間に集中的に人が来てアタフタすることも…。世界的に有名な研究者が多数参加しているため,実物を見せながらディスカッションをしたり,アドバイスをしていただいたりして,ものすごく充実した発表ができます。
下はOptical Marionette (SIGGRAPH 2016)の例ですが,HMDを装着して10m程度歩くという回転率のあまり高くない展示でも,700人以上のお客さんが体験していきました。
SIGGRAPH本家は5日間,SIGGRAPH Asiaは3日間,10:00〜18:00の8時間程度展示を行います…!話しまくって喉が死ぬので,のど飴などの対策が必須です。見たい口頭発表のセッションがある場合は,シフトを組んで上手く対応する必要があります。
Student Volunteer(SV)について
SIGGRAPHでは Student Volunteer(SV)という制度があり,学生が展示のサポートをしてくれます!お客さんの呼び込みや展示説明サポートなどなど。必要なSVの人数は,前述の投稿フォームで採択後に申請をしますが,必ずしも希望の人数が割り当てられるわけではないので注意が必要です。
終了,そして撤収
撤収のスピードがえげぬない pic.twitter.com/EwCyk9NocY
— メディアアルケミスト・ライトシーカー (@exilias) 2016年7月28日
展示が終わると一気に撤収です。会場全体の撤収がものすごいスピードで行われるので,物が無くなったりしないようにしつつ,我々も高速で片付けをします。
おつかれさまでした!!!!!!
その他
会場の冷房が効きすぎ:屋外は暑いが会場は極寒。上着無いと風邪ひきます。
会場が広すぎる:これは良いところとのトレードオフですが移動が大変。
(適宜,何か気づいたことがあれば追記します)
名刺を作っておくとよい:
名刺を作っておくと,学会後に連絡を取るときやプロジェクトページを見せたい時にとても良いのですが,名前と所属だけのシンプルな名刺だと後で何の人かわからなくなってしまうので,プロジェクト等を印刷しておくと良いです。弊ラボの人だと,顔写真を入れている人もいます。
まとめ
デモ展示は大変だけど楽しい
実物を見てもらって多くの人と議論するのはとても重要です。映像や文字だけでは伝えるのが難しいのがインタラクティブ技術ですが,デモで触って貰えば一瞬です!「あーわかるわかる!そういうことね!」みたいな同意リアクションをしてもらったり,「これはここが微妙だけどこういうところを直したら良くなりそう」みたいなアドバイスをもらったりと大変有意義な機会です。SIGGRAPHで無くとも,デモできるものは機会を見つけてデモしたほうが良いと思っています。
デモ展示は計画的に
デモ展示は準備ですることが多いので,適宜共著者や学会運営と相談しながら準備を計画的に進めていく必要があります。計画が破綻してデモが出来なくなってしまうのは悲しい。
関連リンク
SIGGRAPH 2018 Emerging Technologiesの投稿〆切は2018年2月13日 22:00 UTC/GMT(記事執筆時点の情報)です!
Emerging Technologies Submissions - SIGGRAPH 2018
SIGGRAPH Asia 2017の超詳しいレポートです。著者はmast11出身,現在はリクルートマーケティングパートナーズ勤務の鶴田さんです。かなり読みごたえがあるのでこちらもオススメです!