ビデオ中心の学会セッション,CHI Video Showcaseのご紹介! #mastAdC
*この記事は,mast Advent Calendar 2018 の23日目の記事です。
** 22日目はkollipさんの記事『氏(death)を忘れてしまった人類へ』でした。
この記事では,ヒューマンコンピュータインタラクション(Human-Computer Interaction / HCI)分野におけるトップカンファレンスのひとつであるThe ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(CHI)で設けられているセッションのひとつ,Video Showcaseについて紹介します。
Video Showcaseセッションは,HCIにまつわる研究を動画でプレゼンテーションするセッション(2018/12/24 02:00 訂正) HCIにまつわる動画をプレゼンテーションするセッションです。論文は短い要約のみのあくまで補足資料であり,動画がメインになります。
はじめに #誰
@1heisuzuki です。愛知県豊橋市の普通科高校出身で,2015年に一般前期入試で筑波大学情報メディア創成学類に入学しました。執筆現在,同学類の4年生(mast15)です。1年次から先導的研究者体験プログラム(ARE)に参加し,デジタルネイチャー研究室で研究をしていて,卒業研究も同研究室で行っています。
昨年のアドベントカレンダーでは,研究室で参加した学会でのデモンストレーション経験をまとめた『SIGGRAPH/SIGGRAPH Asiaデモンストレーション展示の舞台裏』という記事を書きました。今年も学会にまつわる記事を書きました。
その他やっていることは下記の個人サイトにまとめています。
目次
ざっくりわかるCHI Video Showcase とは
- The ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(CHI) という学会のセッションのひとつ
- 数分程度の動画と要約をオンラインで投稿
- 動画がメインで審査される(Videos Must Stand Alone)
- 投稿された動画は,会場で上映される
- 賞が用意されている
実際にどのような動画が投稿されているのか,百間は一見にしかず,ここ数年の受賞作(賞については後述)を以下に掲載したのでご覧ください!
- CHI 2018 Golden Mouse Award "Programmable Droplets for Interaction" by Udayan Umapathi, Patrick Shin, Ken Nakagaki, Daniel Leithinger, Hiroshi Ishii
- CHI 2018 Best Design Study Award "Participatory Design Fiction: Community Storytelling for Speculative Urban Technologies" by Karl Baumann, Ben Caldwell, François Bar, Benjamin Stokes
- CHI 2018 Best Design Exploration Award "IdleBot: Exploring Non-Engaging Interaction Design in Personal Spaces" by Caroline Overgoor, Mathias Funk
- CHI 2017 Golden Mouse Award "Essence Video Showcase: Olfactory Interfaces for Unconscious Influence" by Judith Amores, Pattie Maes
- CHI 2017 Best Storytelling Award "Videos of things: The other half" by Doenja Oogjes, Ron Wakkary
このように,研究プロジェクトを紹介するものからコンセプトビジョンなど,HCIに関わる様々な動画が投稿・採択されています。投稿全作品はACM SIGCHIの公式チャンネルおよびACM Digital Libraryにアップロードされていて,YouTubeのほうでは再生リストにもまとまっています。他の作品も観てみたい方は下記からどうぞ!
Video Showcase 採択動画プレイリスト
CHI 2018 Video Showcase - YouTube
CHI 2017 Video Showcase - YouTube
Video Showcase 投稿から上映までの流れ
次に,実際にVideo Showcaseを投稿してから会場で上映されるまでの流れを順に説明します。投稿規定は年によって変更される場合がありますので,実際に投稿を検討する場合は学会公式サイトの要項を精読してください!
ビデオを撮影・編集・投稿
撮影終了〜 pic.twitter.com/BZDeOjxuWe
— 鈴木一平 / Ippei Suzuki (@1heisuzuki) January 13, 2018
投稿することを決めたら,どのような動画にするかを考え,素材となる動画を用意し,編集を行います。ファイルのアップロードや情報の入力はオンラインフォームから行います。
CHIではアクセシビリティにも注力していて,音声(ナレーション・セリフなど)がある場合はキャプションファイルを添付する必要があります。ファイルとして添付する必要がありますので注意してください。手順については投稿規定ページに解説があります。
極めて分量は少ないですが,下のようなAbstractも提出する必要があるので,こちらも注意してください。
査読・審査
投稿された動画の審査は次の2つの側面から審査されます。
- 内容: ビデオで扱われている内容はHCI研究者や専門家にとって興味深いものかどうか。
- プレゼンテーション: ビデオのクオリティ。
詳細は投稿規定ページにて説明されており,過去の応募作品にどのような要素が含まれているのかを解説した動画が公開されていますので,これらを参考に構成を考えるのも良いかもしれません。
https://chi2019.acm.org/authors/video-showcase/
- TRANSFORM (CHI 2015)
- Hello World (CHI 2015)
- Personhood (CHI 2013)
- SandCanvas (CHI 2011)
(採択されたら)最終版を編集・投稿する
投稿締切から1ヶ月ほどで採択・非採択の通知が送られてきます!
めでたく採択通知を受け取ったら,最終版(Camera Reday / カメラレディと呼ばれる)の動画を準備します!必要な要件やタスクについては基本的に運営から案内されますので,その指示に従います。主に下記のものが必要になります:
- 最終版の動画
- 最終版の要約(Abstract Paper)
- 著作権についての同意フォーム
場合によっては,最終版でのマイナーチェンジがチェアー(運営のセッションを取り仕切る座長)から指示されることがあるので,可能な限り対応します。それ以外にも細かい部分の修正等を行い,最終版をアップロードします。
30秒で動画編集環境を構築する男 pic.twitter.com/GHMp26JRQi
— エクシリ@2日目西ゆ-20b (@exilias) February 22, 2018
動画のアップロードは,投稿じと同じオンラインフォームで行うのですが,動画のファイルサイズに制限があるので注意が必要です。大きな動画をアップロードせざるを得ない場合はチェアーに相談します。
筆者は昨年のCHI 2018にて,HMDを被ったプレイヤーのいる世界を見物者に向けて可視化しVRデバイドを解決するためのパースペクティブ共有技術「ReverseCAVE」のビデオが採択されました。
動画・Abstractがオンラインで公開される
採択された動画は ACM Digital Library および ACM SIGCHIの YouTubeチャンネルにて公開されます。Abstractについても ACM Digital Library で公開されます。
動画が会場で上映される
採択された Video Showacse は,当該セッションの時間に会場のスクリーンで一挙上映会が行われます!
こちらは2017年の上映風景(筆者も現地で見届けました!)
Congrats @1heisuzuki #CHI2017 pic.twitter.com/NCbGQE2sBs
— 落合陽一 (@ochyai) May 8, 2017
Our two projects have been presented at #CHI2017 Video Showcase☺️ #CHI17 pic.twitter.com/H4LkS5vPDZ
— エクシリ@2日目西ゆ-20b (@exilias) May 8, 2017
こちらは2018年の上映風景(筆者は参加できず…😢)
後輩の勇姿を見にきた #CHI2018 pic.twitter.com/i98PvM4o2X
— よぴた (@yopita_) April 25, 2018
後輩×2 #CHI2018 pic.twitter.com/Aracx2gvLa
— よぴた (@yopita_) April 25, 2018
筆者はまだ2回しか会場の様子を見ていないのですが,年によって状況はかなり違うようです。筆者が現地で見届けた2017年は,学会の開会セレモニーと基調講演の後休憩を挟んで同じ会場で上映されていたのですが,広い会場にもかかわらずお客さんが少なくて寂しい雰囲気になっていました。
一方で2018年は会場が埋まるほどお客さんがいたそうです。スケジュールが変更されたり,ポップコーンが配布されて映画館風になったり(参加者談)していたそうで,運営の方々が工夫された結果(?)かもしれません。なかなか他の学会にはないセッションですから,今後も盛り上がって欲しいなと思います。
結構いましたね。これ全部埋まってました。 pic.twitter.com/IwQ3UGBySQ
— がーしー (@GaaaaaSiiiii) April 26, 2018
受賞式開催
【金鼠賞】踊水滴受賞! Tangible Media Group's #ProgrammableDroplets won the CHI Golden Mouse Award 2018 (Best Video Showcase). Congratulations to @uday1489 and his team! #CHI2018 @medialabhttps://t.co/9CNYZyCHRS pic.twitter.com/IbFpkdcGvF
— Hiroshi Ishii 石井裕 (@ishii_mit) April 26, 2018
Video Showcaseのうち内容とプレゼンテーション両方の観点から最も優れたビデオは Golden Mouse Award に選出され,上映後に授賞式が行われます。他にも開催年によっては審査員賞が設けられている場合があります。
おわりに
研究における動画の利点は,わかりやすく短時間で解説ができるところだと思っています。Video Showcaseだけでなく,普段から研究をわかりやすくプレゼンテーションするために動画や情報発信には力を入れたほうが良いと筆者自身は思っています。
今回紹介した Video Showcase は論文そのものはごく少量のみ要求されるため,これまで学会に投稿したことがないけど,こういう動画に興味のある方でも,挑戦してみると良いかもしれません!
次回のCHI 2019は来年5月にイギリス スコットランドのグラスゴーで開催されます。本記事で紹介したVideo Showcaseの 投稿締切は 2019年1月7日 20:00 GMT(記事執筆時点での情報)です!
詳細および正確な情報については下記公式ページを参照してください:
https://chi2019.acm.org/authors/video-showcase/
著者:
鈴木一平 (Ippei Suzuki) https://1heisuzuki.github.io/
Twitter @1heisuzuki